家庭菜園など、趣味でブルーベリーを育てている方は、
「どうやって剪定すればいいんだろう?」
「元気なブルーベリーの育て方のコツはあるのかな?」
といったように、剪定のコツ・正しいやり方について悩むことも多いかと思います。
※正直、当農園も最初はかなり手探りでした笑。
この記事では、家庭菜園やブルーベリー栽培をしている方のヒントになればと自分なりに解りやすくブルーベリー剪定のコツ(柴田観光農園での地植えブルーベリー(ラビットアイ系8~15年生)における剪定・考え方)についてまとめてみました。
剪定については感覚的な部分が多い作業な為、文字で表現するのはなかなか難しい所もありますが、いつも足を運んで頂いているお客さんにこんな工程を経て果実が実っているよ!!という日誌的な側面や、自分が剪定する際に持ち歩けるガイドライン的(教科書・戒め的)な側面が強いですが、何かの参考になれば嬉しいです。
(ほかの農園さんではどういう風に剪定しているのだろうか?基本的な部分は同じでも、個々にこだわりや考え方がありそうな気がします。)
けっこう長くなってしまったので、お忙しい方は目次より【まとめ】だけでもご覧ください。
目次
・なぜ剪定をするのか?
こうなると、成長が鈍る、結実が悪くなったり、害虫の寝床にされてしまったり。
これはどの果樹にも言えますが、ブルーベリーは特に枝を横に伸ばすので、剪定をしてあげないと生育に悪い影響を及ぼしてしまう可能性が高いです。
剪定をしてあげることで、樹姿を維持し、花芽の量を調整し(当農園ではそこまで調整はしていない)不必要なエネルギーを使わせなくする。
元気に成長してもらう為、実の質・量を安定させる為、この2つが、剪定の大きな目的だと思います。
・ブルーベリー剪定で使う道具
・剪定ばさみ(切れ味の良いもの、枝を切った時の振動を逃がしてくれるものが良い。園主はアルスコーポレーションのVS8R・VS7Rを愛用しています)
・2021年より充電式剪定ばさみを導入(相当量作業の効率化が図れました。)
・果樹剪定用の鋸(鉢植えの場合なくても大丈夫かもしれません)
・細目粒の携帯用ダイアモンドシャープナー(ビバホームで見つけたものを愛用)
【詳しくはこちら】農家が使う【剪定ばさみ】おすすめの選び方・コツ
・ブルーベリー剪定を行う時期
基本的に冬の樹液の動きが少なくなった休眠期(樹への負担が少ないため)に行います。
関東の場合、11月頭から2月末ぐらいといわれています。その年の気候によっても前後すると思います。
当農園の場合ほかの果樹の剪定もあるため1月中旬~3月末にかけて剪定作業をしています。
当農園では基本、夏剪定はしていませんが観光農園という形式上冬剪定後お客様の通り道を確保するために成長しすぎた枝、来年必要ない下向きに発生した枝を切り落としています。
・ブルーベリー剪定を始める前の基礎知識
それを整えてあげて不要な枝を取り除き樹液の流れをスムーズにしてあげるのが「剪定」。
果樹の場合、質の良い果実をつける為には剪定が必要で、毎年、適度な剪定(切らなければ樹は大きくならない)を行わないと、樹全体の日当たり・風通しが悪くなって病害虫の発生の原因になったり細い枝ばかりが成長してしまい、美味しい果実がつかなくなったりします。さらに力のある良い枝が出にくくなり、出てきてくれても日が当たらないので弱るという悪循環。
桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿という言葉を知ってますか?
桜は枝を切ると花が咲かなくなるだけでなく切り口から病気が入り枯れてしまう事があり反対に梅は枝を切らないと花が咲く枝が出来なくて良い実がつかないよ~っていう先人たちの教えです。
要するに、樹にはそれぞれの特徴や性格があり、その特徴や性格に合わせて剪定をしないとうまく育たないということです。
そもそも「剪定とは何の為にするか」を理解した上での剪定をしないと、樹へ無理な負担をかけるのでまず頭に入れておきたいポイントをまとめてみました。
・【重要】ブルーベリー剪定のコツ
沢山の枝が入り組んでいると、病気が発生したり、害虫の温床になる。
切る回数を極力少なくというのは、作業時間・樹への無駄な負担もありますが、剪定につきものの腱鞘炎を考慮して
切れ味というぐらいなので切るという作業は味付けなのです。良く研げた包丁で切る事で細胞レベルで綺麗に切る事ができるので切断面がきれいで、舌触りが良くなったりと・・・
実際、切れる包丁と切れない包丁で切った野菜の切り口を顕微鏡で見て比べるとびっくりするぐらい違いますよ。
剪定しながら、よく人間に置き換えて考えるのですが、綺麗に切れた傷口と、複雑に切れた傷口ではやはり綺麗に切れた傷口の方が治りも早いし治り痕も綺麗なんじゃないかなと。
太い枝を鋸で切る際もできるだけ断面がきれいになるように心がけています。
切り口に樹液を送るのに伴い、それまでの通り道(道中ある花芽等)にも樹液が回るのをイメージをしています。徒長枝なんかは伸ばしたい方向に芽を残してあげると、ほぼほぼ翌年にはそこから新しい枝が出てきます。
切り落とす枝の種類よってに残す芽の数や意味合いは変わってきますが収穫をし易くするのと将来の枝ぶりを決める為の決め事みたいな感じです。
ラビットアイ系は樹勢が強いので、切っても新しい徒長枝や結果枝が出てきやすいですがハイブッシュ系は樹勢がそこまで強くない為、質のいい徒長枝・結果枝をいかに残すかがコツになってくるので限られた時間の中での作業なので、このような決め事をしています。迷ってたら剪定作業はいつになっても終わらない・・・
剪定の効果・意味合いがわかるのは早くても1年後の剪定の時。理想通りに行くかはわからないですが、枝を切る際には来年ここから元気な枝が出て来てくれることを願い切り落としています。
以上のコツをふまえながら剪定の方法をまとめていきます。
・【実践】ブルーベリー剪定の手順
今から上げていく工程を行ったり来たり・同時に・繰り返し行う感じです。コツをわかりやすくまとめる為にある程度、順序化していますが、個人個人作業を好きな順番に並べ替えるのもいいと思います。
切り口が汚いと樹を病気にしてしまう可能性があるので必ず研ぎをします。
面倒くさいと思いますが、このひと手間で病気になる可能性を下げられるなら、病気になってしまってからのことを考えると大した作業ではありませんので、やった方が得策です。
自分は刃が切りやんできた時、剪定を終えてほかの樹の剪定を始める前に研ぎの作業をするようにしています。
それ以外は去年の収穫後成長した枝がそのままの状態
樹の上から見て右回りに作業を進めるのが基本です。
樹全体360°ぐるりと回って見て最終的にどんな樹姿にするかを想像し大ぶりな不要な枝を選ぶ。ブルーベリーは、株元から数本の主軸枝を成長させブッシュ状の樹姿になります。
なので、よく果樹の基本で言われる主軸形・盃形・開心自然形・変則主軸形のような樹姿にはなりません。
ですが、当農園では果実が実って果実の重みで垂れ下がり、最終的に盃型になるイメージで剪定をしています。
剪定作業中も、たまに離れた場所から見るというのも大事なコツです。
枯れ枝と生きている枝は見比べればすぐにわかると思います。
まず枯れ枝を落とすことで、剪定を始める前に複雑に絡み合っっていた枝同士が、枝ぶりが変わり絡みも少なくなりこれだけでも割とスッキリしてくると思います。
昨年切ったところ等から、一年生の徒長枝がたくさん出ていると思います。参考書ですと、この徒長枝を切れ・徒長枝は悪とまで書かれていますが、体験上、この徒長枝の先端に優秀な果実が付くと考えているので極力切らないようにしています。先端に優秀な花芽が付くので先端の花芽は詰めずにそのまま出来るだけ残しています。
どうしても複雑に絡み合ったりそこに徒長枝は無くて良いかなという所等、切らなければならない徒長枝は今年伸ばしたい方向に芽を残して切っています。強く伸ばしたい所は短く切り詰め、伸ばしたくない所は弱く切ってあげるとある程度成長する枝のコントロールが出来ると思います。
まぁ、生き物ですのでどこに伸ばすかはその樹しだいで、横に広がる傾向があり樹姿を整えにくいブルーベリーではありますが、ある程度は樹姿を決めていけると思います。
また、徒長枝が出ていたところは切り落としても、樹に体力があれば翌年徒長枝が出てきます。弱めに切ると残った芽からピューっとヒョロヒョロの枝が出てきてくれる印象があるのであまり弱めにきることはしていません。
それも踏まえたうえで、徒長枝の残し方、芽の切り詰め方を考えるのがコツ。
それでも枝が混みあっている場合大ぶりな枝を落とす。ブルーベリーの樹の場合、更新剪定と言って古くなった主軸枝を新しく出てきたシュートを育てたものに更新していくという作業をするのですが当農園ではあまり更新剪定は行っていない印象です。大きな主軸枝まで育てるのは時間がかかりますし、あえて花芽がたくさんついた大株を落とす意味合いを見いだせていない為です。
頑張れるところまで頑張ってもらって、花芽の付きが悪くなったとき・枝が混みあって来てしまった時に大株の分岐部で切り(他の果樹剪定でいう切り戻し剪定のイメージ)、次に主軸枝一つに対し花芽の付きが悪くなってしまった場合にその間に育ってくれたシュート(3年~5年)に更新している感じです。
お客様が収穫の際手に刺さると痛いので快適に楽しんでいただけるように細かな所まで落としています
樹全体がスッキリしてきたら、花芽のない枝・枯れ枝・花芽の調整をしていきます。花芽の調整に関しては参考書などは良く3~4芽だけ残してとか1/3~1/4の長さに落としてしまいましょうと書いてあります。
確かにこの方法をとると、一粒一粒が大きな果実が実ってくれますが確実に収量が減ってしまう印象です。しかも梅雨時期の連続の雨で水分が、少ない果実に集中するため裂果が起こりやすいです。
当農園では花芽はほとんど落とさない落としたとしても先端の1~5芽程度(枝の太さによって調整、細い枝に身を着けすぎると翌年に枯れ枝になってしまう為)しか落とさないでできるだけ多くの果実を実らせてもらっています。
確かに花芽を強く詰めないと果実のサイズはわずかに小さくはなりますが、3~4芽だけ残した時と食味・サイズに爆発的な変化はあるのか?と言われると疑問が残る為です。
500円玉サイズのブルーベリーの見た目は夢がありますが、花芽を詰めず鈴なりになっているブルーベリーもまた見た目にはインパクト大だと思います。
またブルーベリーは樹上で熟していく過程上、ある程度熟していく順番があるので長期にわたってお客様に楽しんでいただけるという利点もあります。
味・風味は正直、自分の味覚では区別はできないです。もし500円玉サイズのブルーベリーが作りたいのであれば、品種を選ぶ段階である程度大きい実がつきやすいスパルタンなどの品種を選択する等の方法が良いと思います。
観光農園という営業形態上、沢山のお客様に長期にわたって楽しんでいただく為にも沢山の美味しい果実を実らせなければなりませんので、花芽をつめるよりも、花芽のない枝・枯れ枝の剪定を優先し一粒の衝撃よりも鈴なりの衝撃を採用しているところです。
ですが、中には遊び心で花芽を強く詰めて大きな実をつけさせて、来園してくれた子供たちに大きな果実探しておいでぇ~と宝探し感を味わってもらったりもしています。
内向枝・下垂枝は基本的に日当たりが悪い所までしか伸びないので次の年には枯れ枝になってしまうことが多い、仮にそのまま成長してくれても樹姿を乱していく原因なので参考書等は内向枝・下垂枝は切るというのが定説です。でもそういう枝程、花芽が沢山ついていて切るのが惜しいことが多いです。自分なんかは手の届く範囲であればそのまま残したり(盃をイメージして剪定しているので果実が付けば内側も日があたる)一年生の内向枝・下垂枝に関してはしなやかなので、中心部分が混みあってしまうようであれば少し強引ではありますが折れないようにやさしく外側に誘引しています。現段階ではこの時結束バンドを使用してみたり、麻紐を使ってみたりと色々と試行錯誤しています。
仮にこれが原因で来年枯れてしまっても、どちらにしろ切らざる終えなかった位置に出てしまった枝なので諦めをつけやすい・・・下垂枝に関しても果実がついた時の重みで地面についてしまうのを想定しながら、上部にある太い枝に紐で吊ってあげてます。小さなお子様でも手の届く位置に果実をつけてくれますし、枯れずに太くなってくれれば何年か後立派になってくれる可能性を秘めていると思います。
剪定作業が終わったら、切り落した枝を片付けながらそれぞれの主軸枝の根元からイラガの繭等を探しながら枝先に向かってゆっくり観察していく。
繭があったら除去する(イラガの繭には微量ながら毒があるそうなので、素手では触らないように)。コツとしては一本一本、株元から枝先に向かってゆっくりと眺めていく感じです。比較的、枝の分岐部分や枝同士がぶつかり合いそうな所にあることが多いです。この時、益虫と判断するものは大事に取っておく。
ブルーベリーで厄介な害虫は、イラガの幼虫(電気虫)とコガネムシの幼虫が主だと思います。イラガの幼虫に関しては収穫の際、刺されると痛くてテンションが下がるし(自分はもう慣れてきてしまっているが・・・)お客様に楽しんでいただく為に特に注意して見る様にしています。幼虫は農薬による除去もできますが、当農園では原則使わないようにしているので卵で除去!!もし幼虫を見かけたらひたすら捕殺です。
コガネムシは、果実の食害と幼虫による根の食害です。卵は土の中に産むのでコガネムシの対策は、ウッドチップによるマルチか防草シートで覆うのが多いのかな・・・。
害虫に関してはこちらブルーベリーの害虫・益虫【まとめ】
離れた場所から360°ぐるりと見渡し切り残し等ないかチェック!!あとは虫や自然の力で、美味しいブルーベリーが実ってくれるのを楽しみに待つのみです。こまめに害虫が発生していないか?等、様子は見てあげましょう。
【まとめ】ブルーベリー剪定のコツ・やり方【要約】
・病気や害虫を防ぐため
・収穫する果実の量・質を安定させ、樹姿を維持する為
・冬の樹液の動きが少なくなった休眠期に行う。
・関東の場合、11月頭から2月末ぐらいといわれています。その年の気候によっても前後する。
・柴田観光農園では基本、夏剪定はしていませんが成長しすぎた枝を切り落としています。
1・樹への日当たり風通しを良くしてあげる
2・不要な枝(枯れ枝・徒長枝・交差枝・下垂枝・内向枝)だけを切り、切る回数は極力少なく
3・切り口はできるだけ綺麗に
4・枝の切る場所は、伸ばしたい方向に芽を残すか根元から
5・ラビットアイ系は迷ったら切れ・ハイブッシュ系は迷ったら残せ
6・樹液の流れ・樹の成長(2~3年後)をイメージして切る
7・剪定をしながら、害虫の卵は排除していく
Chapter1・【切る前の準備➀】切り口をキレイにする為に剪定ばさみを研ぐ
Chapter2・【切る前の準備⓶】樹全体360°ぐるりと回って最終的にどんな樹姿にするかを想像し大ぶりな不要な枝を選ぶ。
Chapter3・【剪定⓵】まず枯れ枝を落していくと枝ぶりが変わり絡みも少なくなりこれだけでも割とスッキリ
Chapter4・【剪定⓶】徒長枝の残し方、芽の切り詰め方を考えながら徒長枝の剪定
Chapter5・【剪定⓷】それでも枝が混みあっている場合大ぶりな枝を落とす。
Chapter6・【剪定⓸】全体がスッキリしてきたら、花芽のない枝・枯れ枝・花芽の剪定
Chapter7・【剪定⓹】内向枝・下垂枝を誘引・剪定
Chapter8・【仕上げ⓵】切り落した枝を片付けながらイラガの繭等の害虫駆除
Chapter9・【仕上げ⓶】最終チェック
Chapter10・【片付け】剪定ばさみの研ぐ
文字にするとなんだか複雑そうな作業に感じるのですが、やってみるとそこまで複雑ではなく、剪定を進めるうちに基本を知った上での自分なりのルールが出来てくると思います。
実際、自分と父の剪定では求めている事は一緒でも「俺ならこうするな!!」「えぇ!!そこ切る」みたいに方法が違ったりします。それでも美味しくブルーベリーは実ってくれます。あまり深く考えすぎると剪定は終わらないので、切らないと樹は大きくならないと頭に入れて、基本をちゃんと抑えたうえであまり深く考えすぎず剪定をしてあげると良いと思います。
ポット栽培や施設栽培では剪定方法が異なると思いますし、「ウチではそんな剪定はしないよ!!」「いやいやそれは違うだろ!!」というご意見も沢山あると思います。
この剪定を行えばブルーベリーが元気に成長すると保証できるものでもないですしあくまでも参考までにしかなりませんが、この記事を参考に色々な視点からブルーベリーをより楽しんでいただけたらと思います。